骨粗しょう症
骨粗しょう症は、人間が最もかかりやすい病気のひとつです。現在、日本でも多くの骨粗しょう症患者がいるとされ、その8割が女性だと言われています。しかしながら、実際に治療を受けている方は全体の2割程度と少なく、また男性にも増えてきているため、高齢化が進んでいる近年問題視されています。
私たちの骨は、他の組織と同じように形成と吸収を繰り返して新陳代謝をしています。骨からカルシウムが放出されるのが骨吸収で、その一方で破壊された骨にカルシウムを蓄え新しく骨が作られるのが骨形成です。この骨吸収と骨形成のバランスが崩れ、骨吸収が多くなってしまった疾患が骨粗しょう症です。

骨粗しょう症と骨折

骨粗しょう症とは、カルシウムの減少などにより骨がスカスカになり、骨の強度が低下し骨折しやすくなる病気です。特に高齢者は、骨粗しょう症による骨折が寝たきりに結びつき、要介護状態になったりと、極めて深刻な問題を引き起こします。
骨粗しょう症による骨折として、代表的なものとして大腿骨近位部骨折、脊椎圧迫骨折などがあります。
なかでも大腿骨近位部骨折は、現在わが国で最も手術が行われている骨折であり、単に移動能力や生活機能を低下させるだけでなく、死亡率を上昇させる骨折であることが、数多くの研究から明らかにされています。また脊椎圧迫骨折は最も頻度の高い骨粗しょう症性骨折であり、わが国では70歳前半の25%、80歳以上の43%が椎体骨折を有することが報告されています。多発する椎体骨折は脊柱後弯変形(円背)をきたし、難治性の疼痛や逆流性食道炎や心肺機能の低下をひきおこします。椎体骨折の個数が増えるに従い、著明なADL(日常生活動作)、QOL(生活の質)低下と死亡リスクの増大につながります。

年齢問わず女性に多い病気です

骨粗しょう症には、女性ホルモンの一種エストロゲンが深く関係しています。エストロゲンが大量に分泌されている間は、骨からカルシウムが溶け出さないように働きますが、エストロゲンが低下する閉経後には骨量も急激に低下して、骨粗しょう症のリスクが高くなります。しかし偏食や極端なダイエット、喫煙や過度の飲酒などが原因で、最近では高齢の女性だけでなく、若い女性の骨粗しょう症も問題視されています。 女性の生涯における骨量は20歳前後でほぼ最大値を示し、その後比較的安定に推移しますが、50歳前後で閉経に伴う女性ホルモン(エストロゲン)の急激な枯渇に伴い、閉経後10年ほどのあいだに骨量減少あるいは骨粗しょう症と判断される領域へと進行することになります。骨折するまでほとんど自覚症状ないため、骨粗しょう症性骨折の既往をもつ患者さんのみならず、閉経後の女性や70歳以上の男性においても、一度骨粗しょう症診断(DXA)を受けることをおすすめいたします。 当院では日本骨粗鬆症学会が推奨する腰椎と大腿骨近位部の2部位を測定することにより、正確な骨粗しょう症診断が可能です。特に女性の方は、50歳になる前に骨粗しょう症の精密検査を受けましょう。

このような症状はありませんか?

  • 以前より身長が縮んできた
  • 背中や腰が丸くなってきた
  • 背中や腰に痛みを感じる
  • お腹がすぐにいっぱいになる
  • 息切れがする

骨粗しょう症の検査

当院の骨密度測定は、DXA法と呼ばれる、2種類のエックス線を用いて骨量を測定する方法で、精密に骨量を測定することが出来ます。 昔は、骨折してからレントゲンを撮り、初めて骨粗しょう症に気づくといった状態でした。レントゲンだけでは重症の骨粗しょう症しか判断できなかったのですが、近年はDXA法による骨密度測定で早期発見・早期治療ができるようになっています。 また、状態に合わせて血液検査を行うこともあります。
骨粗しょう症の検査

DXA法(2重エックス線吸収法)

2種類のエックス線を用いて骨量を測定する方法で、現在最も正確に骨量を測定することが出来ます。腰椎や大腿骨、橈骨を測定し、骨粗しょう症の診断に使用されています。

血液検査

骨代謝マーカーによって骨代謝を評価することにより、骨粗しょう症の病態把握とともに薬物選択の指針として用いられます。

骨粗しょう症の治療

検査の結果、骨粗しょう症と診断された場合は、患者さんの状態に合わせた療法で治療を行います。
骨粗しょう症は、女性ホルモンの減少、喫煙や飲酒、運動不足なども影響しています。骨量が減って骨折してしまう前に、早い時期から骨粗しょう症に対する予防が重要です。

運動療法

  • ウォーキング
  • ジョギング
  • ストレッチ
  • 片足立ち体操

薬物療法

代表的なものとして、以下のようなものがあります。年齢、性別、骨密度測定(DXA)、既存の骨折の有無などにより、使用する薬物を選択します。

SERM製剤

骨格系および脂質代謝に対し、選択的にエストロゲン(女性ホルモン)作動薬として作用し骨密度を増加させます。閉経後女性に限定した薬です。

ビタミンD製剤

消化管からのCa吸収促進と強い骨吸収抑制作用で、骨密度上昇効果をもたらす活性型ビタミンD製剤です。

ビスホスホネート製剤

骨吸収を抑制し骨密度を増やす作用があり、一般的に70歳以上で骨粗鬆症の診断をうけた際、ファーストチョイスとなる薬です。内服(錠剤、ゼリー)、注射、週1回製剤、月1回製剤、年1回製剤などさまざまな投与方法が選択できます。

副甲状腺ホルモン製剤

骨形成を促進する注射、ビスホスホネート製剤の治療でも骨折を生じた例、高齢で複数の椎体骨折や大腿骨近位部骨折を生じた例、骨密度低下が著しい例での使用が奨められる薬です。安全性の面から使用期間が24ヶ月に制限されています。

デノスマブ

骨破壊を抑制(破骨細胞の分化を抑制)し、強力な骨吸収抑制効果で骨密度を増加させる薬です。6ヶ月に1回投与します。

食事療法

骨を強くする栄養素を多く含む食品

●カルシウム
牛乳、チーズ、干しえび、しらす、ひじき、わかさぎ、いわしの丸干し、えんどう豆、小松菜、モロヘイヤ など
●たんぱく質
肉類、魚類、卵、乳製品、大豆 など
●ビタミンD
アンコウの肝、しらす干し、いわしの丸干し、すじこ、鮭、うなぎの蒲焼き、きくらげ、煮干し、干ししいたけ など
●ビタミンK
納豆、抹茶、パセリ、しそ、モロヘイヤ、しゅんぎく、おかひじき、小松菜、ほうれん草、菜の花、かいわれ大根、にら など

控えた方がいい食品など

  • インスタント食品
  • スナック菓子
  • 過度のアルコール
  • 過度のカフェイン
  • タバコ